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読書感想文千葉県コンクール

更新日: 2023124

お知らせ

第68回青少年読書感想文千葉県コンクールで、北﨑  花奈さん(3年)の作品が優良賞に選ばれましたので、紹介します。


    『挑戦し続けることのすばらしさ』  (図書名:江戸のジャーナリスト葛飾北斎)
                                神崎町立神崎中学校 北﨑 花奈

 「あと十年、いやせめて五年の生を。」葛飾北斎が、こんなにも力強い意志を持っていただなんて。好奇心が旺盛で、九十歳になっても衰えない現役浮世絵師としての創意的意欲に満ちていた彼は、私の思い描いていた北斎とは、全く異なっていた。少しでも長く生き、変化していく時代を描くことで、次の世代へ伝えたかったのだろう。歳を重ねても向上心があり、エネルギッシュさはすばらしく、人生を絵に捧げている姿に、尊敬する。そして、生まれながらの天才だと思っていたが、彼が見えない所で日々努力を重ねていたのは、意外だった。
 私は、努力をしてもうまく行かず、諦めてしまうことが多くある。北斎だって努力をしていたのだから、私は努力なしでは、何事も成功しないとつくづく思った。私も北斎のように小学一年の時から続けているものがある。ピアノだ。私は、手が小さく筋肉も少ないため、曲によっては、大変苦労してしまう。だから、練習を重ね、一曲一曲を仕上げるようにしている。また、苦手な教科やどうしてもわからない問題にあたった時、諦めてしまいたくなる。彼のようにはできないが、彼の前向きな姿から、私も頑張ろうと背中を押してもらった気がする。
 北斎は、立派なアトリエで優雅に作品を創っているイメージだったが、貧乏で引っ越しをくり返していた事にも衝撃を受けた。時に、自分の才能にねたまれたり、破門されたりと大荒れな生活で、家族の為に七味唐辛子を売って生計を立てていたのには、ギャップがあり驚いた。また、馬琴とお互いにぶつかりあって、自分の考えを貫き通した事によってコンビ解消になった。悲しさや寂しさと共に、彼らしさが感じられる一面だ。
 また、人間関係は難しい事もあるが、自分への自信や強い信念がしっかりとしている事に、ぐっと胸が熱くなった。彼の人間味あふれる人柄に、知れば知るほど魅了されてしまう。世界中で有名な「富岳三十六景」は、一瞬で情景をとらえ、それを描く才能が発揮されている。さらに、日本らしさや誰にもまねが出来ない北斎らしさが表され、日本を代表する作品が私は好きだ。
 この本を読むにあたり、作品を見る機会が何度かあったが、「神奈川沖浪裏」は、二〇二四年の新千円札の図柄に採用される。破格な大きさの水しぶきは、目を圧するほどの迫力で見入ってしまい、その世界に入りこんでしまいたくなる。また、鎖国という閉ざされた中にあっても存在感があり、わずかに開かれた扉から、世界に目を向ける威力が印象的だ。特に、鳥の目から見たように、地形の正確さよりも視覚的な楽しさやわかりやすさを求めた「鳥瞰図」。今と違いドローンやコンピュータがない時代に、あんな構図が描けた北斎の想像力は、百七十年以上経っても感動を与えてくれる。森羅万象を見極め、空を飛んでみたい思いを感じる。
 江戸のジャーナリストと言われた葛飾北斎。日々起きる新しい事にアンテナを張って追いかけ明らかにしていく、それがジャーナリスト。絵の持つ庶民の楽しみの域を超えて、目に映るあらゆるものが描かれ、目に見えない空想のものも描かれている。
 また、一つの事や場所に定まらず、好奇心を持ち新分野に進んだ姿勢そのものがジャーナリストなのだ。そんな彼の作品は、日本だけにとどまらず、ゴッホやモネなどの海外の画家達にも影響を与えた。
 さらに、ロシアでも北斎の魅力に気付いて、作品の紹介に力を尽くしていた者がいたのにも驚いた。栄光や名誉にひたるよりも、常に探究心を持ち続けて新しい事に挑戦し続けたから、世界に影響を与えたのだろう。
 もし、令和の時代に彼が生きていたら、今の世の中をどのように描くだろうか。考えるだけでも、わくわくする。きっと、みんなの想像を超え、ユニークな作品を描きそうだ。また、世界中の平和を願うような、誰からも愛される作品を描くのではないか。
 北斎が伝えたかった事は、何だろうか。絵は言葉がなくても、見る事で多くのさまざまな人に伝えられる。その絵により、世界中の人が感動したり、癒されたり、刺激を受ける事ができる。浮世絵の美しさと共に自身の生きた時代を次世代へ伝えたかったのではないか。また、「継続は力なり」と「人生百年時代」を先取りした国際派の絵師だと思う。これから何年先も日本の浮世絵師として、北斎の世界観を知ってもらいたい。時代が変わっても、世界中の人に愛される北斎の作品は、日本の誇りだ。
 これから令和は、私達が創り上げていく時代だ。北斎のように、好きな事をやりたい事を極め貫くのは簡単ではないが、諦めるのではなく、挑戦する気持ちを持ち続けたい。そして、思いきりの足りない私だが、北斎みたいに思いきって行動したい。行動することで自分の選択肢を増やすことができる。自分の一度きりの人生を満足させるために、自分の世界を広げてみよう。